神様には成れない。
ギュウッと目を閉じて、出来る限りの深呼吸を試みる。
落ち着けと念じて、包まれた左手指先に力を僅かに込めた。
「あ、あの……っ淵くん、まっ、待って!」
普通に喋っているつもりなのに、裏返ったり掠れたりガタガタの高さの声ながらに抵抗を見せる。
「いーよ。何?」
対する彼は、変わりもしない声色で、私とは対照的である事が伺える。
それは、今に始まった事ではない。知っていた事なのだ。だけど、私は留まる事を知らない感情に振り回されて限界に達していた。
「わっ、笑われるかもしれないけど、あの、はっ、恥ずかしくて……!」
「何言ってるの。笑わないよ、だってほら」
彼は自らの心臓にあたる部分に、私の掌を持っていき、触れさせた。
「!!??」
「分かるでしょ?心臓がばくばく鳴ってるのが」
「う……」
それは、アルコールを摂取しているが為に脈拍が上がっているだけに過ぎないのではないのか。
なんて思うのに、掌に心臓が脈打っているのを感じてその思考が掻き消される。
そう、知っているのだ。いつもは、酷く心臓が早くなる私には逆に心地いい位に落ち着いた彼の心音を。
だからこそ、その心は高鳴る様に早く鳴っているのもわかった。