神様には成れない。


繋いだ手を緩く握り返せば、彼はその力に気づいたようでまた嬉しそうに目を細めてコツリ、と額を合わせた。

何がそんなに嬉しいのか、へへっと笑う。


「っ?」


まるで遊ぶかのように鼻先を擦ってじゃれる。

猫の気まぐれ、子供の遊び、そんな様子で今度は頬に頬を擦り付ける。


「今日の俺は、すごく、すごく……幸せだなぁ」


噛みしめるように言ったかと思えば、不意打ちのように鼻先に唇を寄せた。

また反射で目をギュッと閉じてしまう。


「目、閉じないで。俺だけ見て」


それをすかさず指摘するように、指先で瞼をなぞられた。

恐る恐る目を開ければ、黒い瞳が此方を、私だけをジッと見ていて他には何も映してなどいなかった。


「笑っちゃうのは俺の方で、きっと明日の俺は今日の自分に凄く嫉妬してるんだよ」

「?」


頭が回らずに、言った事を理解してくれない。それを受けてか彼はクスリと笑って、理解していなくとも続けて言ったのだ。


「でも、明日の俺は今日よりも千花の事が好きだよ」


そうして彼は少しだけ顔を傾けて、その瞳を閉ざした。

そして、ゴッと頭に酷い衝撃を受けた。


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