神様には成れない。
足掻くように指先で宙を掻いてしまう。
「大丈夫……?」
また一段と様子がおかしくなったであろう私に、控えめに声が掛けられる。
「……うん」
正直大丈夫な気がしない。でも、それでも決して離されない手が嬉しいのだ。
彼の手は少し骨っぽくてでも細くて、ああ、男の子なんだなぁなんて思う。思っていた筈なのに、理解は出来ていなかったのかもしれない。
漸く私も彼の手を握り返して深呼吸をする。
優しく握られた手に安心を見出した。
「恥ずかしい話、今まで男の子と付き合った事ってなくて。だから、ちょっとの事でも凄くドキドキして」
だから今、安心しながらもまだ心臓は大きく脈打っている。
「今日の淵くんがどう思っているかは分からないし、昨日の事は覚えてないだろうけど、それでも、あの……たっ、たかだか挨拶程度の、キッ、キスで……取り乱してるだけで……」
口に出すと更に心臓が握られるように痛む。身悶えするほどのその思いに堪える様に、繋いでくれている手に、足先に力を込めてしまう。
それでも顔を上げねばと、勢い任せに籠っていた場所から動き出す。
「そ、それだけだから!ごっ、ごめんね……!?」
恥ずかしさを誤魔化すように声を上げて、平気だと言うように引きつった笑みすら作って見せる。
困っていたのはきっと彼の方で、情けないのは大学生になってまでこんな事くらいで動揺している私だ。