神様には成れない。
それでも彼は、そんな私の手を空いているもう片方の手で包み込んでくれる。
「それは瀬戸さんが謝る事じゃないでしょ。俺が謝る事だよ」
誤解をさせるような言い方をして、過剰に変な反応をして、それでもそうしてくれるのが逆に痛い。痛い上に情けなさを加速させる。
「うっ、ううん。でもっ、あのっ、……!」
「何?まだ何かあるの?」
「あの、えっと……」
これも昨日の彼特有の事で、自分から言い出してしまうのも言い辛い事なのだが、ここまできたのなら言っておきたい。
「昨日、佐伯くんと仲良く?してて妬き持ち妬かせたみたいで、それも、あの、ご、ごめんなさいっ!」
「えっ?あ!あーー……」
「あ、そっ、それと、さっき怖くなかったとは言ったけど、その時はちょっと怖くて……それも嘘ついてごめんなさい……!」
「待って待って。謝る事じゃないから」
「う……っ」
謝り始めるとキリがなくなってしまうらしくて、思いつくままに吐き出してしまうのだが、冷静な彼はそんな私を止める。
彼は俯き加減に頭を下げて、何かを考えているかのように沈黙を持たせる。
次いでゆっくりと言葉を選ぶように紡いでいく。
「う~~んと、最低だけど昨日焼肉を馬鹿みたいな量食べてたところまでは覚えてるんだけど、やっぱり思いだせないみたいで」
それでも誤魔化しなどせずに、申し訳なさそうに眉を下げる。