神様には成れない。


覚えていない。その事は先からの様子を見ていれば重々承知の事実で、咎める必要もないのだ。

なのに、彼自身がそれを許しはしない。


「だからさ、瀬戸さんは昨日の事に関して怒ってもいい、むしろ怒るべきであるんだよ」

「う、う~~ん……」


そう言われてもただただ困る。

怒れと言われて怒れる訳ではないけれど、それならば自分自身を許しはしない彼の為に手助けをしよう。

彼が私の片方の手を繋いでくれているのなら、もう片方の手で私に出来る事をしよう。


「……」


ベッドの隅から這い出て、ちゃんと手が届くところまで身を寄せる。無意識に左手に力を込めながらも、届いた右手で彼の頬を抓った。


「??」


一見すると意味の分からない危害を加えられている本人は、目を丸くしている。

このまま無言でこうしていても意図が伝わりはしないのは分かっている。分かっているけれど、こうしようと思う行動と出来る行動は真逆なのだ。


「き、昨日の淵くんに私は怒って……ます」


だから、行動と言葉は一致させれるものの、イマイチ迫力に、説得力に欠けてしまう事しか私には出来ないのだ。

彼は瞼を瞬かせていた。


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