神様には成れない。
「……」
「……う」
ジッと此方を見たまま流れる沈黙に耐えかね、視線を下に逸らしてしまう。
抓ると言っても痛くない程度の力加減を保っているものの、申し訳なさに、ゆるりと手を離す。
と、その動きで彼も我に返ったのか不意に笑い声をあげた。
「――っあはは!そうだよね!それでこそ瀬戸さんだよねぇ!」
驚いて私もまた視線を彼に戻してしまうのだけれど、その笑みはどこか嬉しそうで、愉しそうでもあった。
「???」
「あ~~……と、ごめんね。悪いのは俺なのに笑って」
誤魔化すように咳払いをして、距離を取る様にゆるりと手を離した。
「ん~~と……瀬戸さんって自分の事では殆ど怒らないのに無理して怒ろうとしてくれたのは俺の為なのかなって勝手に思って」
思い当たるものは勿論あるが、自分の事だけに肯定をしづらいので口を閉ざしてしまう。
そうやって私は過ごしてきているけれど、それが一概に良い行動かと言えばそうとも言えはしない。けれど、彼は肯定するように笑ったのだ。
「俺、瀬戸さんのそういうところが好きだよ」
「!」
ああ、また不意打ちに言ってのける。
まるで幸せに満ちているように微笑むから何も言えなくなる。暗い顔をしてしまうのなら、明るい顔になれるように行動したくなる。
彼の性格がいつだって私を突き動かす。
最初から今までずっと。