神様には成れない。


それも一つの“嫉妬”だったのかもしれない。

思えば私は“彼女”を羨ましく思ったのが彼をちゃんと意識するキッカケではあったのだ。

そう考えてしまえば私も嫉妬深い。だからこそ彼に手を伸ばしたのだ。

目の前の黒いTシャツに手を伸ばして握り締める。


「?」

「――だから、今日の私と秘密を作ってよ」

「え……」

「淵くんが昨日の自分が狡いって言うなら、私は仁菜ちゃんの事が狡い……ううん、羨ましい」

「……」


口に出せば、すっとその感情を飲み込むことが出来た。

良い感情だったり悪い感情であるにしろ、彼と月乃ちゃんの根本に今も尚いた事が羨ましかったのだ。

彼はまた少しだけ困ったような表情を浮かべながらも目を僅かに伏せて、シャツを握る私の手首を掴んだ。


「じゃあ、手、広げて」


何かをさせようとしているのか、そう言って指示をするものだから従うように手を離して広げれば、手の位置をずらすように持っていく。


「え?え?」


困惑する私を余所に、自らの胸の位置に手を持って来させると大きく息を吐いた。

その光景はまるで昨夜のようで。


「分かる?ドキドキしてるの」


その鼓動は昨夜と同じ速さだった。


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