神様には成れない。
手に脈が打つ度に、私の鼓動も呼応するように早くなる。
「ははっ……瀬戸さん顔真っ赤だ……」
「ううっ」
私が心音を感じているからだろうか、そう言う彼だっていつもよりも余裕がなさそうに見える。
その鼓動を感じる度に後ずさりたくなるのだが、それを彼は許さないようにグッと手に力を込めたままだ。
また、呼吸が一つ為される。
「……これは黙ってようと思ってた事なんだけど、瀬戸さんが肯定してくれたあの子への気持ちが嘘でも間違いでもいいなって思ったんだよ。この気持ちが本当に好きだっていうなら」
何も感じはしないと言っていた彼の結論で、彼の変化で。
変えたのが私だったのなら、喜ばしい事でもあり、同時に悲しい事でもある。
肯定した私が彼に否定させたのだから。
それでも胸に広がるのは確かな幸福感で、やっと彼に手が届いたような気がした。
「……そっか。そっかぁ……えへへ」
噛みしめるようにコクコクと彼の言葉に頷いて、安堵の息を漏らして頬を緩める。
私もまた“彼女”を気にして、根付かせてしまっていたのだ。