神様には成れない。
温かい彼の体温を感じる。柔らかいそれの感触が分かる。
薄く目を開いてみればまた目が合った。
「……」
「……」
「何で」と言いたげな、何処か恨めしそうな瞳。
その口元は私の手に塞がれている為に、抗議をする事すら叶わない。
私だって分からない程子供ではない。けれど
「い、一応、ねっ、寝起きだし……!」
夢だけを見ていられない大人なのだ。
現実を語って、現実に生きる。生きている。
「……あっ!」
それは彼だって同じなのだ。
自分一人の感情で成り立つ事はない。
私が盾にした感情は彼を傷つける事だってあるのだ。
「ごめ……」
「待って!……ちょっと待って……っ!」
「んむっ?!」
すぐさま手を離して謝ろうとした私を今度は彼が制する。
容易く口を封じてしまう手が思っていたより力強くて、目を見開いたまま固まってしまう。