神様には成れない。
実の所、先日の事があってから妙な気恥ずかしさだけが残っていて、一緒にいるだけで気持ちが落ち着かなかった為に、今日の事は逆に良かったのかもしれない。
とは言え、彼と一緒に居た後に独りで帰るのはやはり寂しくもあって、何とも天邪鬼で厄介な心である。
「もっと大人になりたいなぁ……」
なんて、雑貨屋の窓に薄っすら映った自分の姿を見つめて呟いてしまう。
見た目を着飾った所で、一杯一杯な所を取り繕う事も出来ず、歳を重ねても大人になどなれていない事を自覚せざるを得ない。
その点彼はいつだって落ち着いていて余裕すらあるようで。ああでもこの間は……
「っ~~!」
と思い出しかけて首を横に振る。
ほら、こう言う所が未熟なのだ。今日だって彼はいつも通りバイトしていつも通り私と接していた。
私だってそうするべきなのだ。
けれど、また思い出してしまうのはドクドクと今の私と同じように脈打った心音。
一緒に居てもいなくても彼に対して平常心を保てないのは同じだ。
「参ったなぁ……」
「ちょっと千花……さっきから何してるの?」
「へ?」
納まらない心臓に耐えかねていると、不意に後ろから声が掛けられる。
「きょ、京ちゃん」
振り返ればそれが即座に誰だか知るのだが、良く知った人物だっただけに、変な行動をしていたのではないかと、今度は心臓が冷えた様に冷たくなった。