神様には成れない。
「……」
「……」
残された二人、と言うのは何だか気まずい。その上あれから殆ど時間も経っていないので、頭の整理が追い付いていない。
考えれるのは今しがたの出来事だけで。莉子ちゃんに言われてしまった事は彼が悪いわけではないのだ。
もし、彼が気にしてしまっていたのなら。せめてまずその話だけでも。と、意を決して顔を上げる。
「あっ、あの、淵くん……あ、」
先に目は合っていたものの、暗がりだった為に気付かなかったのだが、私の右隣に座る彼の左頬、そこが赤くなっているのが目についた。
そうだ。彼は京ちゃんに叩かれていたのだ。
「あ、あの、痛かった……よね、意味ないかもしれないけど……!」
「っ、」
冷やすものなんて持っていなくて、それでもその痛々しい傷を見て見ぬ振りなど出来ないから莉子ちゃんに貰ったオレンジジュースの缶を頬に当てる。
まだ冷えていてよかった。空けずにいてよかった。
けれど、叩かれてしまったこと、叩かせてしまったことは良くなんてない。
「ごめ……っ、」
「……瀬戸さん」
私のせいだと謝ろうとすれば、それを遮るかのように缶を握った手をとられてその缶を抜き取られる。
次いで、私の手を取ったまま直接自らの頬に当てて目を伏せた。
「瀬戸さん」
今一度名を呼ぶ姿はまるで縋るかのように見えて、声を掛けることが躊躇われる。