神様には成れない。
落ちた手はベンチに置かれて、グッと拳を作り上げる。
何かを堪えるように、何処か私に触れられるのを拒むかのように、殻に籠る。
「瀬戸さんに、只のバイト仲間って言わせた事を許さないでよ」
「り、理由があったんだから仕方ない、でしょう?」
必死にいつものように取り繕って見せるけれど、首は横に振られるばかり。
「来宮さんが怒ったのも最もだよ。どんな理由でも瀬戸さんを傷つけていい理由になんて成らないんだから」
「で、でも私、淵くんと仁菜ちゃんの事情を京ちゃんよりは知ってるんだから気にしないで欲しい。と言うか本当に、大丈夫だから」
そんなに、自分を責めないで欲しいと思いを込めて声を掛けるけれど、淵くんを全面的に許す態度を見せたと言う事は、先に莉子ちゃんと一緒に居る時に縋ろうとした理由を浮き彫りにさせる事に繋がってしまう。
私が気に病んでいた事とはなんなのか。
「でも来宮さんと一緒に居た筈なのに中島さんといたのは喧嘩したからでしょ?」
「それは……」
あの様子の京ちゃんからは安易に予想出来る事だろう。
それを気にしていると言うのか。
「……だから、ずっと泣きそうな顔をしてるんじゃないの?」
「……」
出そうとした声が生温い風に奪われる。頭すら下がってしまい、頬が引きつった。
思わず自らの頬を掌で覆う。
表情が固まっているような感覚に、今漸く彼から指摘されて自覚してしまった。