神様には成れない。
この田舎で過ごした事も、都会で過ごす事も、不満があるわけではなかった。
この町でいればゆったりと時間が流れるところが好きだった。夜になれば空に星が無数に見えるところが好きだった。
でも、人の良さに甘んじてしまうのが嫌いだった。何も変わりばえしないところが嫌いだった。
あの街にいれば何でも揃うところが好きだった。夜は煌びやかで眠らないところが好きだった。
そして、目移りして目が回るほどの情報が駆け巡るのが嫌いだった。誰も他人を気にかけはしないのが嫌いだった。
一長一短で全てが完璧な事象など何処にもない。それでも、ここ数ヶ月の私は好きも嫌いも全部を含めて充実していたと感じていた。
家に一人でいる事の寂しさがあったけれどそれも少なくなってすらいた。
「結局ここに来ちゃうんだな、私」
思わず笑ってしまって坂道を下る。
下った先にあるのは何の変哲も無い小さな小川だった。
悩んだ時はここの澄んだ川を眺めている事が多かった。