神様には成れない。


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玄関の引き戸を思いっきり開けて声を上げた。


「お母さん!私あっちに帰るね!!」


言いながら靴を脱ぎ、バタバタと持ってきたバッグを置いた部屋に入る。

お母さんはまだその部屋に居て、騒々しい私の事を気に掛けずに眺めるようにのんびりと顔を上げた。


「そんな事言っても、今の時間じゃ帰るの夜遅くになるんじゃないかしら?」

「……あ」

「“誰か”に会うのなら、迷惑になっちゃうわよぉ?」


確かにふらふらとしている間に夕方に差し掛かった今の時間じゃ、遠く離れた地に帰るには余裕がない。

気持ちが高ぶっていた故の見落としだが、ゆったりとした口調で、聞き捨てならない発言をしたのは見過ごしはしなかった。


「“誰か”って……」

「千花ちゃんが言いづらい事で暗い顔をしてるのなんていつも“誰か”の事でしょう?」


クスクスと、笑って見せてテーブルに置いてあったお茶をコップに注いで私の方に付き出してくる。

私は思わずペタリとその場に座り込んでしまった。



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