神様には成れない。
事情を知っていての発言なのかと思えばそうではない。
『詳しくは知らねーけど、何かややこしい事になってんだろ?京ちゃんがちょこっと言ってたけど』
と、そんな前置きをする。
『あの女の子……元カノちゃんだっけ?それは淵とその子の問題だから千花ちゃんが首突っ込む必要はないと思うし、だからこそ連絡付かないんじゃねぇの?』
「それは……」
そうかもしれない。と口内で呟く。
淵くんが仁菜ちゃんの話を基本的にしなかったのは、話をしなくてもいいと言う彼自身の判断だった。
でも、その後に彼は言ったはずだ。私が話を聞いたうえで私自身が判断すればいいと。
それを踏まえると、今の連絡がつかなくなる程の状況には矛盾が生まれていているのだ。
仮に彼が首を突っ込まないで欲しいから、連絡が付かないようにしているのだとしても、直接聞かないままここで手を拱いているなんてのは嫌だった。
「……あれ?」
そうなると話は彼と連絡を付ける所に戻るのだが、ふと、今の佐伯くんの発言には引っかかる所があった。
「“あの女の子”って、もしかして佐伯くん仁菜ちゃんに会った事あるの?」
まるで見知っているかのような口ぶりとして捉えてしまう。