神様には成れない。
佐伯くんは「あ、」と、しまったと言わんばかりに声を漏らして一つ間を開けてから誤魔化さずに答えた。
『――……大学に来てたのを見かけただけで、俺は直接会った事はないんだよ。ただ、ほら、千花ちゃんと付き合うようになってから好意がある女の子に対してはっきり断ってるって言う話しただろ?』
「うん」
『あれ、何か変だなってずっと思ってたんだよ。適度に女の子から距離取ってる淵がそんな曖昧な段階で直接断るかって』
「私も、それは気になってた」
連絡先を貰ってもゴミ箱に捨ててしまう程に、守りに徹していたのだ。普段の彼のスタンスを崩しているような気がしていた。佐伯くんの言う事に同意せざるを得ない。
佐伯くんが言っていた話が本当なのだとすれば、そんな連絡先をくれた子に対しても断る筈だ。少なくとも私はそれを見た事が無いのだから信じられない。
『それが最近になって知ったんだけど、その断ってる子って複数じゃなくて一人にだったんだよ』
「それが仁菜ちゃん?」
『そう。淵が酷い奴みたいな言い方されるようになってから、俺もちゃんと調べたんだ。噂に尾ひれがつくのなんてよく分かってた筈なのにな……』
噂に踊らされていたと、情けないように声を小さくさせていく。