神様には成れない。
それでも尚、彼女は律儀に私の馬鹿みたいな返答に言葉を返してくれる。
「私は千花がしたいようにすればいいと思う」
「したいように、かぁ……」
おうむ返しするように呟き、ぼんやりと考えるのはどうしても彼の事で。
「私、帰ってきたら淵くんにちゃんと思ってる事言おうって決めてたんだけど、連絡付かないとは思ってなかったんだよね」
現状に対する困り事をぼやく。
それは無意識下の独り言にだって近く、怒りや不安や悲しさなんてものは無かった。ただただフラットな感情だった。
「私にはともかく、何で淵くんにすら帰省する日言わなかったのよ」
「……私も、逃げたかったからかもしれない」
淡々と答えるのは、自分自身の弱い部分。
こうやって後ろを向くのはいつ以来なのだろうか。
綺麗なものだけを見てはいられない様に前だけを見ていても見つけられない物があるのだ。
時折振り返ったって良かった。でもそれをしなかったのは他でもない私自身だった。
「携帯忘れたのも無意識ながらにわざとだったのかも」
「な、に……弱気になってんのよ、千花らしくない」
戸惑う様にぽそりと言われて、足を止める。
遅れて京ちゃんもこちらを振り返ったのだが、私は俯いて足元から伸びる影を見つめてしまう。
ぎゅうっとスカートを握って、押し出す様に声を絞り出した。
「――……ごめんね、京ちゃん」