神様には成れない。
さらりと告げられた事に私の口からは言葉が反射的に滑り落ちていた。
「意味、分からないんだけど……」
考える前に考えるのを放棄したのだ。
「そうだよねぇ」
「いや、そうだよねぇ。じゃなくて」
こっちは分からないんだけどともう一度叫びたくなる気持ちをグッと抑える。
抑えるためにも私は今までの彼、淵七斗(ふちななと)くんについて思い返そうとした。
だが、結論として思い返せるほどの出来事はなかった。
彼とはバイトとバイト帰りが一緒の仲だけであり、話をすることだって大学の事だったりバイトの事だったり、他愛のない話しかなかった。
そしてお互い自分自身についてはあまり話したがらない。
つまり、そんな他愛のない話の中にはこんな意味の分からない言葉を一度だって吐いていなかったのだ。
「死を前提にとか、迎えとか、不穏な言葉ばかり選んでるけど淵くんはその、私の事が……す、す」
「ん?……ああ、好きかって?」
「っ~~!」
私が口にだすのも躊躇う言葉をさらりと相手に言われて、ぶわっと体温が高まるのを感じた。
なのに、
「――好きだよ。瀬戸さんの事、すごく好き。大好き」
それに相反するかのように軽い調子で何度も好きだと告げられた。
「……」
その様子を見て不意に、今まで熱かった体温がすっと冷めるのを感じた。
温度差がありすぎる。違和感がぬぐえない。