神様には成れない。
彼女なら何か知っている、協力してくれるかもしれない。
これはただの驕りだったのだろうか。甘い考えだったのだろうか。
「心当たりがあるのにどうして?」
『兄が大事にしている場所だからです。きっと貴女になら快く受け入れてくれると分かっていても、私は兄ではありませんから確信なんてどこにもないんです。だから簡単には教えれません』
敵対。そう表現するに相応しいだろう。
先まで彼の事をよく知る彼女だからこそ、淵くんの代わりのように確信を持って彼の事を語っていたのにまるで正反対だ。
何がここまでそうさせるのか。
しかし、ここでまた一転して明るい声。
『とはいえ“私自身は”千花さんを応援したいので言いますが、兄がいる場所の心当たりはお祖母様の家です』
「……お祖母様、梢さん?」
気弱になってしまっている私はこれだけで憔悴したような居心地になり、抑揚のない声色でせめてそれだけを返した。
彼のお祖母さんの名を口に出されるのが意外だったのか、電話口からは驚いた声が漏れてくる。
『――ナナは少しでもお祖母様の話をしたんですね。……そうです。ナナは大層お祖母ちゃんっ子でしたから、心の拠り所でもあったんです』
そのお祖母さんが亡くなって寂しかった。だから慰めでシャルロットを飼った。
そう漏らしていた彼の心中を考えれば、きっとよほどの出来事であったはずなのだ。