神様には成れない。
その心の拠り所である家に、不用意に近づけさそうとしない彼女からもそれは読み取ることが簡単に出来た。
これが最大限譲歩した結果の情報提供だと彼女は言っているのだ。
「月乃ちゃんが送ってくれてた写真の梢さんと淵くんの写真、裏返ってたの」
『……そうですか』
勝手に見ただとか、今勝手に彼の部屋に入っているだとか、そんな事すら説明しなかったのに、彼女は深く追求せずに頷くだけだった。
それについても不要に私が気に掛けているのを感じ取ったのか、彼女はため息交じりに言葉を掛ける。
『お祖母様の事に関して兄が今もまだ気に病んでる事はないと思います。だからこそ私も今になって、お祖母様との写真を送ったんです。なので、貴女がそこを気にする必要もありませんよ』
「そう、だよね」
『そうとは言え、少し私もタイミングが悪かったかもしれませんね』
電話口から思い悩むように唸る声が聞こえる。私はまた何も返すことが出来ずに黙り込む。
ここに不在の彼の話だけに、これ以上の進展は望めないだろう。
しかしながら、電話を切る気にもなれずに互いに沈黙を作り出す。
シン、と静まり返った部屋。しかし沈黙の中、いつしか彼女の方からはコツ、コツ、と爪で何かを叩くような音が規則的に聞こえてきていた。
考え事をする時に無意識にする動作だったのだろうか。
暫しその音を耳にしていれば、彼女は静かに告げた。