神様には成れない。
手の先を辿れば、ニッコリと笑う表情に辿り着く。
「はい。千花ちゃんに返しとくね」
「何で……?」
「だって、私には必要ないものじゃない?人のスマホなんて」
「……」
ならば何故そのスマホを持っているのか。疑問に次ぐ疑問が湧き上がる。
スマホ受け取ろうとしない私に痺れを切らしたのか、一度私の前にそれを置く。つられるようにして今一度席に着けば彼女はまた一口パンケーキを口に運んだ。
そしてまた、私の知りたい事に答えてくれる。
「それ、ナナくんが落としたの拾っただけなんだけど、きっと私から逃る為にわざと分かりやすく落としたんだと思うんだぁ」
「でも流石にわざとスマホ落とすわけないんじゃ……」
「でもそれ、最初からロックかかってたよ。盗難防止アプリも使ってるんだと思う」
「??」
「千花ちゃんスマホとか疎い方?それさえ使っとけば第三者に使われる事も見られる事もないし、逆にスマホも追跡できるんだよ」
便利だよね〜〜などと笑いながら示唆するのは、位置情報が抜かれていると言う事だ。
それが分かっているのならば、早々に落とし物として交番に渡せばいいと思うのにそうしなかったのは何故なのだろうか。
逃げられてると分かってるなら位置情報を知らせる必要などないのだ。
「こっちからメッセージ送れたら早いんだけど、まぁ、嫌でもその内ナナくんと会えるだろうからね〜〜っと、ご馳走さま。ちょっと席外すね」
言いたいことだけ言って、彼女は立ち上がってしまう。
私と話している間にもずっと食事を続けていて、いつの間にか完食をしていたようだ。
私のお皿にはほぼまるまる来たままの姿でパンケーキが残っていた。