神様には成れない。
不服そうな表情を浮かべながら莉子ちゃんは私の右側に、莉子ちゃんの友達は私の左側に座る。
これで仁菜ちゃんが戻れば私の正面に座る事となる。
「ごめんね瀬戸ちゃん。食べたらすぐ出るからさ。一緒にいる子は大丈夫?」
「うん、今席外してて……そろそろ戻ってくるとは思うんだけど」
多分大丈夫だろう、気にしないでと手を振りチラッと左側に目をやる。
思いがけず目が合うも、人懐っこそうな笑みが向けられた。
「ねぇ、莉子ちゃんこの人は……友達?」
「ん~~、そう」
歯切れ悪く肯定をし、暫し逡巡した後に観念したかのように溜息を吐き出して、言った。
「ほら、前に瀬戸ちゃんに紹介しようとしてた他の学部の奴。木嶋くんっていうんだけど」
「木嶋翔平です。よろしく、瀬戸千花ちゃん」
「よろしくお願いします」
軽く挨拶を済ませれば、何故彼が私を見知っていたのかを莉子ちゃんが教えてくれる。
「瀬戸ちゃんなら木嶋くんと会ってくれそうだったから、先に写真見せてたんだよ」
そう言いつつも、小さく「失敗した」と後悔の言葉を溢す。
「ん?」
どういう意味かと問いかけ直そうとすれば、左側からまた声を掛けられる。
「俺瀬戸ちゃんと仲良くなりたかったんだけど、中島が急に気が変わったー、瀬戸ちゃんは私だけの瀬戸ちゃんなんだよーとか訳の分からない事言い出してさぁ」
「え、あ……」
それの意味する所が思い当たり、返答に戸惑う。
あの時は淵くんの事で悩んでいて、私が断ったのだ。それを木嶋くんに対してはそう言って角が立たないようにしたのだろう。
仲がいいからこそ、自分の気まぐれさえ許される範囲があるのだ。