神様には成れない。
木嶋くんは悪い人でない。莉子ちゃんだってそれに準ずることは言っていた。だから、私だってそう思いたいけれど、友達の良い人は私にとっての良い人になり得ないのかもしれない。
第三者の話のネタにされているだけで悪気はない。そう、噂話の一つとして楽しんでいるだけのようなものなのだから、咎める必要などない。
それでもやはり、木嶋くんが立っている場所は彼を悪く言う場所だから、良い気はしないのだ。
「って、瀬戸ちゃん大丈夫?上手くいってないってやっぱり、皆に優しいからとか?」
莉子ちゃんの良い人だと言う皮を被せるなら、これは純粋に私を心配してくれるからだろう。
大丈夫だ。何も悪い事など言ってはない。
「えと、大丈夫。淵くんの良いところだよね、優しいことは」
「あ、そういや、俺も名前すら知らない筈なのに教科書貸してもらったなー。そのクラスの友達ちょうど休みで困ってたからさー、そん時は中身もイケメンかって思った」
「ふふ……何それ」
取り繕ったわけでもなく、思い当たった事をパッと口にする彼に悪意は見当たらない。
大丈夫だ。このまま、話を流してしまえれば何も思わずに済む。
「でも、今は連絡取れなくて困ってるんだって、ね?千花ちゃん」
それなのに、そうする事を仁菜ちゃんは許してくれない。