神様には成れない。


怒る事。

それは私にとっての悪で、ましてや自分の為に怒るなどというのは言語道断。そう、思ってきた。

母の教え、家庭環境から起因するであろう感性だったけれど、そんなものはもう要らないと帰省して分かったのだ。

私は私の幸せを取り戻しに行くと決めたのだ。

怒らない事が逃げだったのなら、今は立ち向かうのだ。


「何も知らないくせに勝手な事言わないで。私は淵くんと一緒に居たいから一緒にいるの。こんなのは辛いうちに入らない。辛くたって全然いいんだよ」

「せ、瀬戸ちゃん?」


私の性格を知っているからだろうか、怒った様子の私に驚いたように莉子ちゃんは声を上げた。

でも、止める気などない。

そもそも、月乃ちゃんにも妹としての意見で見限れと言われて、木嶋くんにも自分の方が良いからと蔑ろにされて我慢などできる筈無かったのだ。

私だってただの人間だ。そこまで我慢できるようにできていない。


「確かに、同じくらい優しい人だっているんだと思う。同じように色んなところ行って同じように楽しいって思ってくれる人がいるんだと思う」


きっとそれだって幸せになり得るのかもしれない。


「でも“同じ”ってだけで、淵くんにはなり得ない。淵くんは淵くんだからこそ、好きなんだよ」


それ以上もそれ以下もない。

私はゆっくりと立ち上がって、早足に店から出た。

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