神様には成れない。
-----
走って走って。追いつけそうで追いつけない。柔らかい髪が靡く後を追うばかり。
照りつける日差しは少しずつ傾き始めていて、視界に入った街中の時計は4時を指していた。
横目に見遣った時計台の長針がまた時を刻んだ。
どこまで走るのか。どこまででも走り続けるのか。私が居なくなるまで足を止めないのか。
分からないままに追っていれば、次第に彼女の駆ける足はゆっくりとペースを落として行く。
代わりに残りの力を振り絞るように此方のペースを上げればあっさりと彼女の腕に手は届いてしまった。
「仁、菜ちゃん!」
名を呼び引き止めれば彼女は肩で息をして、乱れた髪もそのままに途切れ途切れに私を責めた。
「な、なんで……おっ、てくるの……?放って、おけば、いいじゃん」
「だっ、だってまだ、話終わってない、から」
二人してゼーゼーと荒い息を繰り返して、その場でうな項垂れる。
こんな真夏に走れば体力は容易に削られてしまう。
息をしながら周りを見渡せば川の近くまで来て居たようで、また視覚的に涼しさを覚えた。