神様には成れない。
大きく息を吐いて、少しだけ頭を上げる。
「どうして急に走り出したの?」
「……」
私の問いにジロリと鋭い視線を向けて、不服そうに唇を尖らす。
「……嫌だったから」
一言最初に述べたかと思えば、力強く私の手を振り解き、正面に向き直る。
そうしてもう一度言うのだ。
「ナナくんが私を好きだとかそんな話されて嫌だったから」
「え……?」
そんな、理解も及ばない答え。
何故、と疑問が頭を巡って一周し、微かな答えを持ち帰る。
今の彼女にそう言われたからだ。と。一種の嫌味と捉えられたのだ。と。
そう言う皮肉も嫌味も持たせたわけではないと、慌てて口を開こうとして、仁菜ちゃんがまた言った。
「私は私の好きがナナくんに残ってなくても良かった。そんなのは、結局ナナくんにとっての好きじゃないもん」
それは、私が思っていたものとは違う感情だった。