神様には成れない。
「文句付けたいだけの過度なクレームで、ましてや瀬戸さんのミスでもないのに凄い剣幕で怒鳴り続けて」
彼はその光景を思い出しているのか蔑む様な目で、それでも眉をひそめた。
相手は厳つい見た目をしていた男の人で、その表情も思い出せる。
「あ、この子泣いちゃうかもな。俺が間入っても悪化するだけなの分かってたし、かと言って店長出てる時だったから、どうしようかなって考えてる間に、少しずつ声も落ち着いて来てさ」
その時の彼の判断は的確だっただろう。庇うように入ってもらってたとしても逆上してしまう事など往々にある。
文句つけたいだけのクレーム。まさにそれで、相手を打ち負かしても終わらない。店長が出てくればようやく収まる。もしかするとそういう人だったかもしれない。
「何処にでも居る、大人しそうな弱い女の子だろうなって思ってたのに、全然違うんだから驚いた。物怖じしない強い子で……ちょっとだけ尊敬した」
「そんな大層なものじゃないんだけど」
正面切って賞賛するように話されると、何とも照れてしまい、曖昧に笑って誤魔化す。
けれど彼は緩く首を振った。