神様には成れない。
「ごめんね、すぐ開けるから。一応管理人さんに瀬戸さんが来たら開けてもらうようには言ってたんだけど……居ないみたいだね」
「え、あ、ううん。私も昨日一方的だったからごめんなさい」
当たり前だが彼は前回とは打って変わってスムーズにエントランスの鍵を開ける。
私はと言えば、いつもとは違う姿の彼に戸惑いを覚えて後ろ姿をマジマジと見てしまって居た。
そうしてハッとする。
「あ、あの、スーツ着てるって事は淵くん予定があったんじゃ……もしそうなら、話はまたちゃんと日を決めて……」
大学二年生でまだスーツを着ることなどさほど無いけれど、着る事があるのなら大事な予定なのではないかと薄い考えを持つ。
また日を改めてにしようと提案するのだが、彼は私の発言にキョトンと首をかしげる。次いで、思い当たったかのように返答をした。
「え?ああ、これはいつも午前中だけだったから大丈夫だよ」
「本当に?と言うか何してきたの?」
「えぇっと……親の会社の手伝い。バイト的な」
不躾な質問だと後になって思ったが、それでも彼は答え辛そうにしながらもそう答えた。
「親、の、会社……バイト」
あまりピンとこないワードにただただ単語を繰り返す。
彼は苦笑いを浮かべながら部屋に帰る為にエレベーターに乗り込んだ。私も後を追って乗り込む。