神様には成れない。
エレベーターに乗ると、無意識に視線が上に向いてしまう。彼も同じようで、視線を上に向けながら少しだけ話の続きをしてくれた。
「バイトって言っても、会社の一室に泊まらせてもらうのに働かせてもらってただけなんだけど」
内容は簡単なデータ入力のような事務作業だと彼は言った。
「じゃあ、家に居なかったのって、会社に泊まってたから?」
「うん。暫くホテルに泊まるっていうのも中々難しくて。親に頼るのも情けない事なんだけど」
その事に抵抗を感じていたようで、ほんの僅かに眉をひそめる。
しかし、逆を言えばそうまでしてこの部屋から離れたかったと言うことだ。
それをどう問えばいいのか。いや、問うべきではないのか。
「……あ、……」
「ん?」
考えあぐねて一音こぼしてしまい、それに反応した彼が此方を見遣る。
だが、言葉は続かない。
そんな私を見て彼は不思議そうに首を傾げた。
それと同時にエレベーターは到着したと音を立て、扉は開かれる。
「あ、着いたね」
「う、うん」
意図せず会話が中断された事にホッとしたと同時に、意気地なしと口内で呟いた。