神様には成れない。
変てこな話にも間を開けずに淵くんは返してくる。
「うぅん……?どこだろ。ちょっと悪いんだけど直してくれない?」
「う、うん」
言われるがままに、淵くんの方へ身を乗り出して髪に手を伸ばす。
見た目通りサラリとした感触を感じながらも、触れることにドキドキとせざるを得なかった。
きっと合コンにくるような子はこんなことで一々戸惑わないのだろう。合理的に近づけて幸運とすら思うのかもしれない。
もっとも、それが口説く側の狙いなのかもしれないが。
「千花ちゃんの髪、長いからくすぐったい。ちょっとごめんね」
「へぁ!?」
くすくすと笑いながら私の髪に触れ、くすぐったいとの言葉の通り時折彼に当たる髪を耳にかけてくる。
淵くんの指先が軽く耳に触れるだけでぞわりとするのに
「あれっ?瀬戸さんピアスしてたんだ」
耳に近い距離で言葉を発するからぞくりと体が震えた。
「近い!近い近い離れて!!」
強引に京ちゃんに引きはがされて、元の席に座る。
未だに硬直していた私は漸く気づく。そうだ、今のは演技のようなものだったのだ。
その境目を忘れてしまうくらい、私は淵くんに魅入ってしまっていたようだ。