神様には成れない。
また意見の合致を見せて、二人して苦笑いを浮かべている。
私だってこの考え方が一番正しいとは思っていないし、聖人君子ぶっているつもりもないのだが、身に付いた考え方は簡単に正せはしない。
そもそも自分を守る為に怒ると言う行為も実際の所私には難しくて苦手なのだ。
「まあ、それはそれとして。忠告しておくなら見た目に騙されるなってこと」
「騙されてはないけど……」
「俺も騙してないし」
と言うよりも、こと淵くんに関してだけ見れば男女の関係なんてあってないもので、見た目通りなのではないかと思いさえする。
内情を知っているのが私だけだとすれば、そう言われても仕方のないところもある、
「それでも。それでもだよ千花ちゃん。俺酒解禁の時に男友達と騒いで手が滑って淵に頭から酒ぶっ掛けたことあんだけど、そん時にちょーっと口に入ったみたいで大変だったんだぜ?」
バイトでの淵くんくらいしかまともに知らないので、そんな集まりもするのかと呑気に想像していたのだが、話の趣旨を忘れてしまっていたので、次なる言葉にまた頭が追い付かなかった。
「淵って酒はいると、ドエロくなるんだよ」
「……?」
一体何の話だっけと首を傾げてしまう。
「酔うとな。こう、妙な色気が出て、振る舞いこそ酔ってるように見えないのに明らかにおかしい。それでも気怠い雰囲気はあるから、それと相まってエロさを感じて、目が合ったら最後抱かれてもいいって思ったね。男なのに」
そこで思考は完全にショートし、何かを考える隙間などなくなっていた。