神様には成れない。
「ごめんね?やっぱり待ってもらうべきじゃなかったよね」
「え、何で?」
「来たことに気づかないくらいどこか見てたし、早く帰りたいのかなって」
そうじゃないと分かってはいたものの、そう言ってしまったのは待たせたことは私の自分勝手な思いも含まれていたからだった。
「んー……別にそんな訳じゃないし、迷惑だとか思ってないんだけど」
やけに緩慢な動きで立ち上がり、また周りを見渡す。
その瞳には一体何が映っていたのだろうか。
「瀬戸さん来るのかなってちょっと心配だった。もしかしたら来ないんじゃないかって」
ただ今は私と目を合わせ、眉を下げて微笑むだけだった。
バイト終わりの延長線で一緒に居た時間とは違い、あの日の告白以来時折こうやって彼の事が見えなくなる瞬間がある。
まるで、壁が出来てしまったように。
否、逆に彼に近づいているからその壁に行きついているのかもしれない。
「――なんて、冗談だから。瀬戸さんに限ってそんな事ないのにね。さ、帰ろっか」
近づいたと思っても、彼は自ら遠ざかっていく。
「?瀬戸さん……?」
だから私はこの両の掌で彼を引き止める。