神様には成れない。
「……」
足元に転がった缶からは飲み干せていなかった液体が流れ出ている。
前回の時も地面に落としてしまったな。なんて、呑気な事を考える。
物を粗末にしたい訳ではないので、三度目がないようにしたいのだが、どうにもこうにも淵くんの言動を読む事が出来なくて困惑してしまうのだ。
細い指先が私を引き止めている。何故なのだろう。
いや、分かっている。突然の行動に驚くだけで、彼の言葉そのものには他意はない。
密かに深呼吸をして、後ろを振り返った。
「また、誤解を生むような事言うね?」
「瀬戸さんだって同じじゃん」
確かに私だって誤解を生むかのように引き止めた。
それでも同じではないのは、この場所と家という違いではなく、互いの気持ちの問題だろう。
彼はどうとも思ってはいないけれど、やはり異性の家に上がるとなると意識せずにはいられない。
何もなくともだ。
それでなくとも
「!」
こうしてまた突拍子もなく指と指を絡ませてくるのに。