神様には成れない。



猫の鳴き声が聞こえたかと思えば、淵くんが入って行った部屋から一つの影が勢いよく飛び出て来る。


「あっ!?こら!待てって!シャル!」

「へ!?」


どたどたと音を立てて此方に走り寄ってくる白い猫。

しかし、私が玄関先に立っていたからか突然方向転換をして来た方向に逆走をする。が、


「ああもう!何でお前今日そんなに元気なんだよ」


当然猫を追ってきていた淵くんがその方向にいた為、敢え無く捕まってしまう。

困った顔をしながら彼が抱き上げれば、思いの外猫は暴れる事無くされるがままになっている。


「瀬戸さん猫好き?」


猫と共にまた玄関先に戻ってきて、問いかけてくる。

手元に目を移せば猫は少し身じろぎしながらも、じっとその丸く青い目で此方を見ている。

毛の長い白猫で、首には赤いリボンの首輪が結ばれている。


「か、かわいい……!」


質問に答える事もせずに、その猫に見入っていた。

大学生になってからと言うもの、猫など見る事もなかったので少しばかり感動のような感情が起こった。


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