神様には成れない。



シャルロットを抱えながら淵くんの入って行った部屋へと足を踏み入れる。

マンションの外観から広いのは安易に予想出来たのだが、大学生の一人暮らしと考えると広すぎる部屋だ。

同じく一人暮らしで大学に通っている私のアパートと比べると、その差は歴然だった。

私が住んでいるアパートは、大学が提供してくれたワンルームの部屋で住人もみんな大学生なのだ。

対するこの部屋はおおよそ他の大学生が住んでいるようには見えなかった。


「その辺座ってていいよ」

「うん」


あまり野暮な事は聞けないだろう。私は中央のテーブル付近に腰を下ろし、シャルロットを膝に乗せた。

ふと淵くんを見るとキッチンに立っている。


「何か手伝う?」

「大丈夫大丈夫。飲み物入れるだけだからシャルと遊んであげてて。あ、でも、瀬戸さんってもしかしてコーヒー苦手な人だったりする?」

「の、のめ、る」


詰まりながら返答した所で気づいたのだろう。ククッと笑いを零した。


「誤魔化さなくていいよ。えぇっと、じゃあカフェオレなら飲める?あいにく紅茶は無くて」

「うん。それなら飲める。ありがとう」

「いーえ」


いつもはリンゴジュースを飲んでいて、なかった時には紅茶やお茶などを選択するので、気づかれていたらしい。

私が苦いコーヒーなど選択しない事に。




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