モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
ん?
なにか、まずかったか?
「莉世、今結構熱高くて、誰か会いにきても通さないでって言ってて」
「あー、そっか……」
莉世の言いそうなことだ。
誰にも会いたくないって言うのは、まさにその通りなんだけど、実際はその人に移したくないからっていう、優しい莉世の心遣い。
体調が悪い時でも、人の心配してるのか……
本当に優しいな、莉世は……
その優しさにまた1つ、好きが増えた。
「莉世の優しい心遣いを無駄にしたくないから、これ俺からって言って、渡しといてもらえねーかな?」
本人がそう言ってるのに、無理やり会おうとか、さすがに人としてどうかと思うし。
何より、莉香ちゃんが看てくれてるなら、大丈夫なはず。
「はい、これ」
そう言って袋を差し出せば、
一瞬。
ほんの一瞬だけど、
にこっと笑ったその表情が、切なげに笑ったように見えた。
しかもまた、それが莉世のつらそうな表情をしている時と同じに見えて……
「っ……莉、香……ちゃん?」
「うん!なに?」
思わず、2度見してしまった。
この子は、莉香ちゃんで、莉世じゃない。
念の為、もう一度じっと見たけど、やっぱりそんな面影はどこにもなくて。
俺の、気のせい……か?
不思議に思う俺の前では、ありがとうと、またにっこり笑う莉香ちゃんがいた。