モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
それから暫くして、なんとか呼吸と気持ちが落ち着いてきた頃、蒼井はゆっくり体を離した。
「莉世の体が心配だし、今日はもう帰ろう」
「うん……」
そしてそっと涙を拭ってくれた後、私の腰に手を回して歩き出した。
「本当は、お姫様だっこしたいところだけど、さすがに外だし、莉世も嫌だろうから…これで我慢な?」
「うん……」
取り乱して、デートの終わりをこんなことにしてしまったのにも関わらず、文句1つ言わず、とびきり優しく接してくれる。
私、なにやってるんだろう……
せっかくのデートで、自分の気持ちにもやっと素直になれて、蒼井に全てを話そうとしたのに。
また振り出しに戻ってしまった。
結局私はいつまで経ってもこうやって、あの日からずっと、変わらないまま……
ズキズキと痛む胸を押さえて高台を降り、少し歩いた頃、蒼井は立ち止まった。
「駅までもう少しだけど、なるべく早く家に帰したいから、近道するな?」
「……ごめんね、蒼井…」
「何言ってんの。
いつも甘えてくれないんだから、こういう時は、ありがとう、でいいんだよ」
「うん……」
本当にごめんね、蒼井……
そう、心の中でもう一度呟いた時だった。
「っ!?」
目に飛び込んできたその景色に、足も、体も動かなくなった。
「じゃあ、こっちから行こ……って、莉世?」