モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。

あ………


「あおっ……」


「り、せ………?」


「っ……」


目の前で、私へと伸ばされた手が徐々に離れていく。


私、今なんてこと……


乱れていた息が落ち着き、頭から水をかけられたように一気に冷静になる。


やって、しまった……


取り返しのつかないことを、してしまった……


その手を、その優しいぬくもりを、振り払ってしまった。


あたたかい光の手を、大切な人を奪っていく恐ろしいものと錯覚してしまった。


顔を上げれば、切ない顔で、今にも泣きそうな顔で私を見ている蒼井に、胸を引き裂かれるような痛みが走る。


拒絶、してしまった。


私に光を、その優しい灯火を差しのべていてくれたのに。


私はその手を、大好きな人を、一瞬でも、拒絶してしまった。


「莉……」


「ごめんなさい……っ」



そして、呆然としている蒼井を置いて、私はその場から走り出した。


< 229 / 318 >

この作品をシェア

pagetop