モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
あ………
「あおっ……」
「り、せ………?」
「っ……」
目の前で、私へと伸ばされた手が徐々に離れていく。
私、今なんてこと……
乱れていた息が落ち着き、頭から水をかけられたように一気に冷静になる。
やって、しまった……
取り返しのつかないことを、してしまった……
その手を、その優しいぬくもりを、振り払ってしまった。
あたたかい光の手を、大切な人を奪っていく恐ろしいものと錯覚してしまった。
顔を上げれば、切ない顔で、今にも泣きそうな顔で私を見ている蒼井に、胸を引き裂かれるような痛みが走る。
拒絶、してしまった。
私に光を、その優しい灯火を差しのべていてくれたのに。
私はその手を、大好きな人を、一瞬でも、拒絶してしまった。
「莉……」
「ごめんなさい……っ」
そして、呆然としている蒼井を置いて、私はその場から走り出した。