モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
「莉世っ!!!」
後ろで私を呼ぶ声が聞こえたけれど、振り向くことは、できなかった。
傷ついた表情。
悲しみで、今にも泣きそうな歪んだ表情。
あんな表情をさせたかったわけじゃないのに。
拒絶することなんて、明るい、まぶしい光の世界に行く自分を、見捨てることと同じだったのに。
私は過去の恐怖から、不安から、怯えから、それを自らの手で手放してしまった。
「っ……、ふっ……」
とめどなく流れる涙なんて、もう気にする余裕もなかった。
やっぱり、無理だった。
過去を話すことで、嫌われるんじゃないか、離れていくんじゃないか。
また大好きな人を、自らの手で失ってしまうんじゃないか。
そんな弱い気持ちを抱えたまま、後ろを向いたまま、今までだって一度も越えられなかった大きな壁を、きっと大丈夫だと、乗り越えていけるだなんて。
覚悟が、足りなかった。
私には、弱さばかりで、それに立ち向かう強さがなかった。
こんな私が、幸せを掴むだなんて、人を好きになれるだなんて、そんな価値なんかあるはずがない……
だったら……
だったら、私は………
「ごめん……っ、あおいっ……」
その場に膝をついて、何度も何度も謝り続けた。
きっと、嫌われた……
もう、無理だ……
「っ……」
蒼井から、離れよう……
止まらない涙と嗚咽に、私は息が詰まるような覚悟と共に、暫くその場で泣き崩れていた。