モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
天野の腕を引っ張り、和栗はグイグイと玄関へ向かう。
「はっ?
お、俺もまだ、莉世と……」
「はいはい、それはまた今度。
蒼井くん、莉世の部屋は階段上がってすぐの部屋だから。じゃあ、また明日ね」
「あ、ああ……」
まだここにいると渋る天野を引きずり、帰って行った和栗。
しかも、ジロッと俺を睨んでいた天野の頭をバシッと叩いたりしていた。
和栗、強い……
さすが莉世の友達ってことはある……
「………」
よし。
行くか。
静かになった空間で1人、強く頷いて階段を上がる。
莉世の部屋、とドアに掛けられた文字を見てふぅ、と深呼吸してノックした。
コンコン。
「誰?歩優?」
どうやらもう起きたようで、いつもの声が返ってきた。
「ごめん、俺…蒼井だけど」
緊張して、声が震えそうになるのがバレないように、両手にぎゅっと拳を作る。
「…………」
特に返事はなかったけど、少し間が空いてから、ゆっくりドアが開かれた。
「蒼井……。
中、入ってくれる?」
「うん」
俺を見上げる莉世の顔はとても不安そうに強張っていて、見てるこっちの胸が張り裂けそうなくらいの表情。
いつもみたく、ツンツンした態度はもちろん、目の色もどこか光を失って、濁って見えた。
「大丈夫。
俺がついてる」
ポンポンと安心させるように、頭を撫でれば、
「うん……」
肩の力が抜けて、少しその表情が緩んだ気がした。