モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。

部屋の中に通され、俺も莉世もラグの上に、ベッドの側面を背にするようにして並んで座った。


「寝てなくて、大丈夫なのか?」


そっと顔を覗き込めば、莉世はふるふると力なく首を振る。


「私のは…体のどこかが悪いとかじゃなくて、もっと重い……精神的なもの、だから、大丈夫」


「精神的なもの?」


体の具合が悪いとかじゃなくてホッとした自分もいるけど、精神的なもの…逆に言えば、きっとそれは、俺の想像がつかないくらいつらいものなんだと思う。


「………」


「莉世?」


それから俯いたまま、黙ってしまった莉世。


その華奢な肩や唇が震えていて、いつもより何倍も小さく見える。


言いたいのに、言葉にできない。

怖い。


そんな莉世の気持ちがひしひしと感じられて、俺はその肩にそっと手を回して、ぎゅっと抱き寄せた。


「あお、い……?」


ぐぐもった声が聞こえてきたけど、俺はそのまま頭から包み込むように、優しく頭を撫でる。


俺が傍にいる。

俺がついてる。


そう、強く言い聞かせるように。


「大丈夫…、大丈夫。
話すのが怖いならこのままでもいいし、ずっと手をつないでてもいいから。俺は莉世に合わせるよ」


今までずっと、何度も俺に言おうとして言えなかったこと。


それを今から話すんだから、きっと、恐怖や不安でたまらないはず。


俺が、全部受け止めるから。


安心させるように語りかけると、ゆっくり体を離し、俯いていた顔を上げた莉世。


そしてキュッと結ばれていた口が開いた。


「……まず、過去のことを話す前に、言っておかないといけないことが2つあるの」


< 249 / 318 >

この作品をシェア

pagetop