モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
莉世の後を続くように部屋を出て、着いた先はすぐ隣の部屋。
「ここって……」
ドアにかかった文字に、思わず目を見張る。
「ここは、莉香の部屋」
莉香ちゃんの……
莉世がドアを開けてくれたので、中に入らせてもらうと、莉世とはまた雰囲気が違い、THE・女の子の部屋って感じ。
莉世はシンプルな感じだったけど、莉香ちゃんの部屋はどっちかっていうと、物が多い印象。
同じ双子でも、こんなに違うのか……
と、部屋の中をぐるりと見渡していて、ハッと気づく。
「もしかして、莉香ちゃんは……」
ストンと頭に落ちてきた1つの仮説。
考えたくはないけど、もしかしたら……
それが原因で、莉世は……
すると、俺の思っていたことが伝わったのか、莉世はまだ雨が降り続ける窓に近づき、外を見ながら呟いた。
「蒼井の思っている通りだよ。莉香はいない。……2年前に、亡くなったの」
悲しい、悲しい。
苦しい、苦しい。
何度も何度も声が枯れるくらい、苦しみに耐えながら叫び続けているような、震えた声。
聞いていられないほどつらそうなその声に、胸が張り裂けそうになるのを必死に堪える。
そしてゆっくり振り返った莉世は、俺を見て言った。
「……私が二重人格になったのは、莉香が亡くなったから」
「莉香ちゃんが、亡くなった原因は……?」
そう問いかけた途端、ふっと人が変わったかのような莉世の雰囲気に、思わず息を呑んだ。
虚ろな目。
暗い表情。
ーーそして、抑揚のない冷たい声。
「………私が、殺したの」
「え……?」
殺したって……
聞きなれない言葉に驚く俺に、莉世は続けた。
「私が、莉香を殺したの」
「っ!!」
薄暗い部屋の中で呟かれた言葉は、土砂降りの雨の音に混じって、消えていった───。