モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
「じゃあ、俺が莉世のお見舞いに行った日、莉香ちゃんだと思っていたのは……」
「それも、私」
人格が変わっている間の記憶はほとんどない。
同じ病気の人で、それをコントロールできる人もいるらしいけど、私にそんなことはできない。
それに、この病気の主な特徴としては、2人以上の人格が現れるのが普通らしいけど、私はずっと莉香1人。
「莉香は元々ダークブラウンのボブだった。私が莉香になってる時は記憶にないけど、お母さんが言うには、ウイッグを被ってるらしいよ」
そして近くにあったクローゼットから、それを持ってきた。
「そう、これだった。
莉香ちゃん……いや、莉世はこれを被ってたんだな」
蒼井はゆっくりとした手つきで髪をなでる。
「いつも莉香になってる時は記憶がないから日記をつけるようにしてるんだけど、蒼井が来たっていう記録はなかったから、この間のデートでそれを初めて聞いて」
「なるほどな。
だから、あの時俺が莉香ちゃんに会ったって言ったら、驚いてたわけか……」
なぜ私の中にいる莉香が、蒼井のことを日記につけなかったのかは分からない。
でももしかしたら、蒼井にいつかはこの事を知られるって、心のどこかで覚悟していたのかもしれないな……