モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。

バシバシと蒼井の腕を叩き、苦しいと訴えると、蒼井はやっと離してくれた。


「俺も莉世のこと、好きで好きでたまんない」


そして私を愛おしいと言わんばかりの甘い眼差しで見つめる。


「はー……俺、今人生で1番幸せかもしんない」


「っ!!」


そう言って、嬉しさを噛み締めるようにして、手を伸ばしてくる。


私だって幸せだよ。

蒼井に、好きな人に…こんなに好きだって、大事だって、思ってもらえて。


私だって好きだよ、蒼井のこと。


蒼井の言葉を使わせてもらうとしたら、私だって蒼井のこと、好きで好きでたまらないよ。

過去のことを聞いても、病気のことを話しても、変わらず好きでいてくれる、まっすぐな蒼井のことが。


邪険にしたり、離れていこうとしたりしないで、

変わらずそうやって、笑ってくれることが。


だけど……


今から言おうとしていることは、きっと蒼井のその笑顔を奪う。

いつも明るくて元気をくれる、その大好きな笑顔を私が奪ってしまうことは分かってる。


そう思うと、過去を話している最中に決めたことが、決意が、揺らいでしまう。


言えなくなってしまう。


さっきの言葉……



“ 俺、今人生で1番幸せかもしんない ”



心臓が、止まるかと思った。



そんなに幸せなことを、嬉しいことを言ってもらえるだなんて、思ってもみなかったから。


こんなに醜くて、実の姉を殺すような汚い自分を愛してくれて。


涙を堪えるのに、必死だった。


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