モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。

「莉世が心を開いたってことは、あなたのことを、相当信頼している証拠だと思う」


「はい」


「今からする話は、莉世に1度もしたことない話。それは、莉香が亡くなった原因について」


「え、1度もって……
それに莉香ちゃんが亡くなった原因って、事故死なのでは……」


どういうことだ?

首を傾げる俺に、莉代さんは続けた。



「私も夫も最初はそう思っていたの。だけど、本当は違った」

「違った……?」


じゃあ実際の原因は一体……


「その話を聞いたのは事故から1週間経った後だった。本当はちゃんと話すべきだったのに、もう発症した後だったの」



「それが、解離性同一性障害……」



「そう。そんな中で、言えなかった……。本当は事故死じゃなかったって。私達親が真実を話すことで、ただでさえなんでも1人で背負おうとする莉世が、苦しんで、また変わってしまうんじゃないかって」


莉世はその性格の通り、自分から苦しいとは絶対に言わない。


苦しんで抱え込んで、それが溜まりに溜まった結果が、きっと病気という形で現れたんだろうな……


「あの、1つ聞いてもいいですか……?」


「なに?」


莉代さんは一瞬俯き、そっと目を拭った後、まっすぐ俺を見た。


きっと莉世だけじゃなく、大事に大事に育ててきた娘を失った悲しみを、莉代さんも心に深い傷を負ったまま、生きてきたんだろうな……


< 276 / 318 >

この作品をシェア

pagetop