モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。

「…………」


驚きで、言葉がなかった。

何も言うことができなかった。


けど、だとしたら、莉世が知っている真実とは全く違う。

莉世は自分が姉の命を奪ったと言っていたけど、実際はそうじゃなかった。

自分を追い詰める必要はなかった。


「そんなの、莉世本人に話さないと意味がないじゃないですか……」


出てきた声はとても低いものだった。


我慢できなかった。


病気になるまで自分を追い詰めて、自分は幸せになれないと、泣きながら必死に気持ちを閉じ込めて、俺を突き放したことも。


莉世にとっては、苦しい以外の何ものでもなかったのに。


もしこの話をもっと早くにしていれば、莉世がつらい思いをすることは、もしかしたらなかったかもしれないのに。


「分かっているわ……
本当は話すべきだったのに、私達親が逃げてしまった。決して逃げてはいけなかったのに、1番苦しいのはあの子のはずなのに、真実から目を背けてしまった」


「………」


「ほんと、ダメな母親ね……」


その声は、震えていた。


きっといくつもの葛藤があったんだと思う。


話すべきか、話さないべきか。


でもそれは全部、莉世を思うが故にしたこと。

ただの他人の俺が、思いもしないほど、苦渋の決断だったんだと思う。



「でもどうして……」


「え……?」


「どうしてその話を、他人の俺にしてくれたんですか……」


< 278 / 318 >

この作品をシェア

pagetop