モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
「…………」
驚きで、言葉がなかった。
何も言うことができなかった。
けど、だとしたら、莉世が知っている真実とは全く違う。
莉世は自分が姉の命を奪ったと言っていたけど、実際はそうじゃなかった。
自分を追い詰める必要はなかった。
「そんなの、莉世本人に話さないと意味がないじゃないですか……」
出てきた声はとても低いものだった。
我慢できなかった。
病気になるまで自分を追い詰めて、自分は幸せになれないと、泣きながら必死に気持ちを閉じ込めて、俺を突き放したことも。
莉世にとっては、苦しい以外の何ものでもなかったのに。
もしこの話をもっと早くにしていれば、莉世がつらい思いをすることは、もしかしたらなかったかもしれないのに。
「分かっているわ……
本当は話すべきだったのに、私達親が逃げてしまった。決して逃げてはいけなかったのに、1番苦しいのはあの子のはずなのに、真実から目を背けてしまった」
「………」
「ほんと、ダメな母親ね……」
その声は、震えていた。
きっといくつもの葛藤があったんだと思う。
話すべきか、話さないべきか。
でもそれは全部、莉世を思うが故にしたこと。
ただの他人の俺が、思いもしないほど、苦渋の決断だったんだと思う。
「でもどうして……」
「え……?」
「どうしてその話を、他人の俺にしてくれたんですか……」