モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
私の、嘘ばっかりの言葉を遮るようにして放たれたそれは。
「お母、さん……?」
ふっと俯いていた顔を上げると、お母さんは泣いていた。
「どうして………」
我に返った途端、先程までの気持ちの高ぶりが、一気に収まっていく。
「どうして、お母さんが泣いて……」
慌てる私を、お母さんは遮るようにして続ける。
「ちゃんと聞いて、莉世。
お母さん、莉世に話さないといけないことがあるの。ずっと話そうと思ってたのに、あなたの事を考えたらずっと話せなかった」
「え……?」
「だけど、蒼井くんが教えてくれたの。
それをちゃんと、莉世に話すべきだって」
蒼井が……?
驚いて目を見張る私に、蒼井は真剣な顔で頷いた。
「あなたに、ずっと黙っていたことがあるの……」
震える声で、目に涙をためて話すお母さんに、胸がドクンドクンと嫌な音を立てていく。
まさか、話って………
「莉香ちゃんのことだよ」
すると、今まで黙っていた蒼井が口を開いた。
「り、莉香の話って……、どうして蒼井がそんなこと……それに、今更莉香の話がどうしたって言うの?莉香は死んだ。私が殺したも同然で、莉香は交通事故に遭って死んだの!!
今更何を………」
「違う」
「え………」
「それは違うよ。莉世」
はぁはぁと、息を荒らげて大声を出す私に、蒼井はゆっくり近づいてきた。
「何が、違うの……?
莉香は死んだ……、死んだの……
私が、私のせいで、莉香は……」
そう言いかけた瞬間。
ふわっと、身体中を包む甘い香りと、安心するぬくもり。
「っ……」
涙がポロポロとこぼれ落ちる中で、ぎゅっと強く、抱きしめられた。
「違うんだよ、莉世。
莉香ちゃんが亡くなった原因は、確かに交通事故だった」
「ほ、ほら………」
「違う。最後まで、ちゃんと話を聞いて。確かに莉香ちゃんは、交通事故に遭って亡くなった。けどそれは、莉世を庇ったからじゃない」
え………
どういう、こと……?
信じられないその言葉にゆっくり顔を上げると、蒼井は強く頷いて言った。
「莉香ちゃんは……自殺、だったんだ」