モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
「っ…別に、ただ、そうなんだくらいにしか思わなかったから。勘違いしないで」
突き放すように、ふいっと顔を横に背けるけれど、蒼井は笑うだけ。
「……ふはっ、ほんっと絵に書いたようにツンデレだなぁ、莉世?でもだからこそ……」
「っ……何、よ?」
ポンと頭に手のひらを乗せられて、私をじっと見つめて言った。
「俺に振り向かせたくなる」
「は……?」
「素直じゃないところも、口では突き放すようなこと言うけど、本当は優しいところもぜんぶ。俺に夢中になって、俺のことしか考えられなくしたい」
「ま、つまりは俺が莉世を独占したいってこと」
唇に人差し指を当てられて、いたずらっ子のようにニッと笑った蒼井。
「っ!!」
一瞬、胸がドキンと跳ね上がった。
「な、何言ってっ………!!」
「おっ、チャイム鳴ったし、戻るか〜」
なんて、狼狽える私を見て、何もなかったかのように、楽しそうに屋上を出て行った。
「ねぇ、莉世?」
「なに?」
「チャイムは鳴っちゃったけど、もうちょっとここにいたら?」
「な、なんで?」
「だって、莉世……顔、トマトみたいだよ?」
「っ!!」
触れられた唇が、熱い。
熱を持ってるみたいに、やけどしそうなほど。
なんなの、あの男……
プレイボーイとかじゃないって言う割に、いちいち言うことが甘すぎなんだけど!!
頭に浮かぶのは蒼井の、
意地悪そうに笑った顔。
楽しそうに笑った顔。
そして、真剣にこちらを見つめてくる表情。
「っ……、油断した…」
そう呟いた私の声は心地いい風と共に流れて行った。