モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
いつもクールな姿で、何にも怖気なさそうな莉世が、この時ばかりは、まるで…別人のように泣いていた。
綺麗で澄んだ大きな目からは溢れんばかりの涙がこぼれて。
頬を伝って、流れ落ちた涙は、床にポタポタと染みをつくっていた。
頬が濡れていることなんか、一切気にしないで泣き続ける莉世。
「……め…、っ…」
なに……か、言ってる?
その言葉までははっきり聞き取れなかったけど、
地面に叩きつけられるようにして降る雨を見ながら、何度も何かをつぶやいていた。
眉が下がって、何かを抱えているような苦しそうな表情。
真っ直ぐ外を見ているはずなのに、その目はどこか濁った色を含んでいるように見えた。
「っ………」
一言も話したことない。
ただのクラスメイト。
さっさと中に入って、カバンを取ってこればいいのに、なぜかその場に立ち尽くしてしまった俺。
足が、動かなかった。
莉世のその姿を見ているだけで、胸の奥をぎゅっと掴まれたように苦しくて。
胸を引き裂かれるような、締め付けられるような、
……自分まで泣きそうになる。
そんな気持ちに駆られてしまった。