モテ男子が恋愛したくない私に本気をだした結果。
「はい、莉世。おはよ」
「さ、さっきも言ってたじゃん……」
「まだ莉世から聞いてないし。
俺、それ聞かないと1日頑張れない」
「お、大袈裟な……」
「ほら、言って?」
スっと身体が離されて、覗きこまれた瞳はお願い、と強く訴えかけてくる。
もう、そんな目で見ないでよ……
「お、はよう……」
改めて言うのが恥ずかしくて、発した声はめちゃくちゃ小さくなってしまった。
「ふはっ、声ちっちゃっ!」
「う、うるさいな!!
早く行かないと電車乗り遅れるから!!」
蒼井が吹き出した隙に、するりとその腕から抜け出した私。
こっちは頑張って言ったってのに、笑うだなんて、ひどすぎじゃない!?
でも……
めちゃくちゃ嬉しそうにしてたのは、一瞬だけ……
ほんの一瞬だけは、見えた気がする。
「あっ、おい!
待てよ!!」
一目散に走り出した私の後ろで、蒼井が、また笑いながら走る音が聞こえる。
なんで笑いながら走ってんのよ……
不審者に思われて、補導されても知らないんだからね?
それを言おうと思ったけれど、今は死んでも振り向かない。
だって、今そうしたら絶対からかわれるのは目に見えてるから。
たぶん、私……今顔、赤いと思うから。